MakeとZapierはどう選ぶ?ノーコード自動化ツールの違いを実務目線で比較
問い合わせフォーム、Googleスプレッドシート、Slack、メール、WordPress、CRM。こうした複数のサービスをつなぎ、手作業の転記や通知を減らすときに使えるのが、MakeやZapierのようなノーコード自動化ツールです。
結論から言うと、手早く定番アプリをつなぎたいならZapier、分岐やデータ加工を細かく組みたいならMakeが向きます。どちらも「Aが起きたらBをする」という自動化を作れますが、画面の考え方、分岐の作り方、実行回数の数え方、保守のしやすさが違います。
この記事では、Web制作・WordPress運用・小規模な業務自動化で迷いやすい場面を前提に、MakeとZapierの違いを整理します。
- Zapierは、フォーム送信や新規行追加などをきっかけに、順番に処理をつなぐ「Zap」が基本
- Makeは、複数の処理を視覚的に配置する「Scenario」が基本
- Zapierは初期設定が分かりやすく、定型業務の立ち上げが速い
- Makeは分岐、繰り返し、集計、JSON処理などを画面上で組みやすい
- WordPressやサーバー運用では、Webhook、認証情報、エラー時の再実行設計が選定の分かれ目になる
確認時点は2026年7月です。料金、無料枠、対応アプリ、プランごとの制限は変わるため、導入前には公式ページで最新条件を確認してください。
まず押さえる違い:Zapierは一本道、Makeは作業フロー図に近い
MakeとZapierの一番大きな違いは、同じ自動化を作るときの「頭の中の形」です。
Zapierは、上から下へステップを積む感覚で作ります。たとえば「フォームが送信されたら、Slackに通知して、Googleスプレッドシートへ追加する」という処理は、次のように並びます。
- Trigger:フォーム送信を検知する
- Action:Slackに通知する
- Action:Googleスプレッドシートに行を追加する
一方、Makeはキャンバス上にモジュールを置き、線でつなぎます。途中で条件分岐したり、複数件のデータを1件ずつ処理したり、最後にまとめたりする流れが見えやすい作りです。
ここがポイント: Zapierは「誰でも迷いにくい順番型」、Makeは「処理の流れを細かく設計しやすい図解型」と考えると選びやすくなります。
初心者がつまずきにくいのはZapier
Zapierは、トリガーとアクションを順番に選ぶだけで基本形を作れます。対応アプリのテンプレートも見つけやすく、Gmail、Slack、Google Sheets、WordPressなどの定番連携を短時間で試しやすいのが強みです。
「新しい問い合わせが来たら通知する」「新しい行が追加されたらメールを送る」のような一本道の自動化なら、Zapierのほうが最初の成功体験を得やすいでしょう。
処理が増えるほどMakeの見通しが効く
Makeは、少し複雑な処理で力を出します。
たとえば、WordPressのフォーム送信内容を受け取り、問い合わせ種別ごとに担当チャンネルを変え、添付ファイルがある場合だけ別処理を走らせる場合です。こうした処理では、Makeのルーターやフィルターを使うと、分岐が画面上で追いやすくなります。
ただし、自由度が高いぶん、最初は「どこに何を置けばいいか」で迷いやすい面もあります。
比較表:実務で見るべき差は機能名より運用のしやすさ
単純な機能一覧だけでは、どちらを選ぶべきか判断しにくいです。実務では、作る人、直す人、エラーを見る人が困らないかまで含めて考えます。
| 比較軸 | Zapier | Make |
|---|---|---|
| 基本単位 | Zap。トリガーとアクションを順番に積む | Scenario。モジュールを線でつなぐ |
| 向いている処理 | 定番アプリ同士のシンプルな連携 | 分岐、繰り返し、データ加工を含む連携 |
| 画面の分かりやすさ | 手順型で初心者が追いやすい | 全体像を図として見やすい |
| データ加工 | Formatter、Filter、Pathsなどで対応 | 関数、ルーター、イテレーター、アグリゲーターで細かく組みやすい |
| 料金の見方 | 主にタスク数やプラン制限を見る | 主にオペレーション数や実行設計を見る |
| 保守の注意点 | ステップが増えると全体像を見失いやすい | 自由に組めるぶん設計ルールが必要 |
機能の多さだけで選ぶより、最初に作る自動化が一本道か、分岐を含むかで判断するほうが失敗しにくいです。
具体例:WordPress問い合わせをSlackとスプレッドシートへ流す
ここでは、Web制作やサイト運用でよくある「問い合わせ通知」を例にします。
やりたいことは次の通りです。
- WordPressのフォームから問い合わせが届く
- 内容をSlackに通知する
- Googleスプレッドシートに記録する
- 種別が「見積もり」のときだけ営業担当へ追加通知する
入力データは、Webhookで次のようなJSONを受け取る想定です。
{
"name": "山田太郎",
"email": "taro@example.com",
"type": "estimate",
"message": "WordPressサイト改修の見積もりを相談したいです。",
"page_url": "https://example.com/contact/"
}
期待するSlack通知は、たとえば次のような形です。
新しい問い合わせが届きました
種別: estimate
名前: 山田太郎
メール: taro@example.com
本文: WordPressサイト改修の見積もりを相談したいです。
Zapierで作る場合
Zapierでは、次のような順番で作るのが自然です。
- Webhooks by Zapierで問い合わせデータを受け取る
- Slackへメッセージを送る
- Google Sheetsへ行を追加する
- FilterまたはPathsで、typeがestimateのときだけ追加通知する
この流れは、初心者にも追いやすいです。各ステップで「どの項目をSlack本文に入れるか」「どの列へメールアドレスを入れるか」を選んでいけば、コードを書かずに連携できます。
注意点は、分岐が増えたときです。問い合わせ種別が「見積もり」「採用」「サポート」「迷惑問い合わせ」のように増えると、PathsやFilterの整理が必要になります。後から別の人が直す場合は、ステップ名を分かりやすく付けておくことが重要です。
Makeで作る場合
Makeでは、Webhookを起点に、Slack、Google Sheets、ルーターを画面上に配置します。
- Custom webhookで問い合わせデータを受け取る
- Slack通知モジュールにつなぐ
- Google Sheets追加モジュールにつなぐ
- Routerで問い合わせ種別ごとに分岐する
- estimateの場合だけ営業担当向け通知へ流す
Makeの良いところは、分岐が画面上で見えることです。どの条件でどの処理へ進むかを線で追えるため、複数の通知先や条件を扱うときに整理しやすくなります。
一方で、モジュールの実行回数が増えやすい点には注意が必要です。1件の問い合わせでも、Webhook受信、Slack通知、Sheets追加、分岐後通知と複数の処理が動きます。料金や上限を見るときは、単に「問い合わせ件数」ではなく、1件あたり何ステップ動くかを数える必要があります。
選び方:最初の1本を作るなら目的から決める
初心者が迷ったときは、「使いやすそう」ではなく「最初に自動化したい処理」で選ぶほうが現実的です。
Zapierを選びやすい場面
Zapierは、チーム内で非エンジニアも運用する定型連携に向いています。
- Gmailに届いた問い合わせをSlackへ流す
- Googleフォームの回答をスプレッドシートに残す
- 新しいWordPress投稿をSNS投稿の下書きに使う
- CRMに新規リードを登録する
- 既存テンプレートを使って短時間で試したい
このような処理では、Zapierの手順型の画面が強みになります。後から見返したときも、上から順番に「何が起きるか」を確認できます。
Makeを選びやすい場面
Makeは、データの整形や条件分岐が多い業務に向いています。
- 問い合わせ種別ごとに通知先を変える
- 複数行のCSVやスプレッドシートを1件ずつ処理する
- APIのJSONを加工して別サービスへ渡す
- エラー時だけ管理者へ通知する
- 複数サービスをまたぐ処理を図として管理したい
たとえば、WordPressの投稿一覧をAPIで取得し、カテゴリごとに整形して別システムへ送るような処理では、Makeのほうが流れを組み立てやすいことがあります。
よくある失敗:動いたあとに壊れる原因を先に見る
MakeでもZapierでも、最初のテストが成功しただけでは十分ではありません。実務では、データの欠け、権限切れ、実行回数、エラー通知まで見ておく必要があります。
失敗1:テスト用データだけで作ってしまう
フォームのテスト送信では、すべての項目をきれいに入れがちです。しかし実際の問い合わせでは、任意項目が空だったり、長い本文が入ったり、想定外の文字が含まれたりします。
最低限、次のパターンで試してください。
- メールアドレスあり、電話番号なし
- 本文が長い
- 種別が未選択
- 日本語、英数字、記号が混ざる
- 添付ファイルがある場合とない場合
データが空のときにSlack通知が崩れるなら、初期値を入れる、条件分岐で止める、スプレッドシート側の列を見直す、といった調整が必要です。
失敗2:APIキーやログイン情報を個人アカウントに寄せる
外部サービスと連携する以上、認証情報の扱いは避けられません。ZapierやMakeでは各サービスへの接続を保存できますが、退職予定者や個人メールのアカウントで接続すると、後で止まる原因になります。
実務では次を確認します。
- 連携用の共有アカウントや管理者アカウントを使えるか
- APIキーをチャットやメモに貼っていないか
- 権限が強すぎないか
- 不要になった接続を削除できる運用になっているか
- エラー通知を誰が受け取るか決まっているか
特にWordPressと連携する場合、管理者権限のアカウントを安易に使うと、投稿、ユーザー、設定変更まで広い権限を渡すことになります。必要な操作だけに絞れるかを先に確認してください。
失敗3:料金を「実行件数」だけで見てしまう
自動化ツールの料金は、単純な月間問い合わせ数だけでは判断できません。1件の問い合わせで何回の処理が動くか、分岐先で追加処理が動くか、失敗時の再実行がどう数えられるかが効きます。
たとえば、月500件の問い合わせでも、1件あたり5ステップ動けば、実行される処理はかなり増えます。Zapierではタスク数、Makeではオペレーション数の考え方を確認し、無料枠や下位プランで足りるかを試算してから運用に入るほうが安全です。
代替ツールとの使い分け:MakeとZapierだけで考えない
MakeとZapierは便利ですが、すべての自動化に最適とは限りません。
Power Automate
Microsoft 365を中心に使っている会社では、Power Automateが候補になります。SharePoint、Teams、Outlook、Excelとの連携が多い場合は、社内アカウントや管理ポリシーとの相性を確認する価値があります。
Google Apps Script
GoogleスプレッドシートやGmailを中心にした軽い自動化なら、Google Apps Scriptも選択肢です。コードを書く必要はありますが、細かい条件分岐や独自処理を入れやすく、無料で始めやすい場面があります。
n8n
自社サーバーやクラウド環境でワークフローを管理したい場合は、n8nのようなツールも候補になります。セルフホストを選ぶなら、サーバー運用、アップデート、バックアップ、セキュリティ対応も自分たちで見る必要があります。
MakeやZapierは、こうした運用負荷を減らしながら外部サービスをつなぐ選択肢です。逆に、社内規定でデータを外部SaaSに送れない場合は、別の方法を検討する必要があります。
判断チェックリスト:迷ったらここを見る
最後に、導入前に確認したい項目をまとめます。
- 最初に作りたい自動化は一本道か、分岐ありか
- 連携したいアプリが公式に対応しているか
- WebhookやAPI連携が必要か
- 月間の実行件数と、1件あたりの処理数を見積もったか
- エラー時に誰へ通知するか決めたか
- 認証情報を個人アカウントに依存していないか
- 後から別の人が見ても分かる名前を付けられるか
- 無料プランや試用環境で、実データに近いパターンを試したか
MakeとZapierの比較で見落とされやすいのは、作成時の便利さよりも、3か月後に直せるかです。小さな通知連携ならZapierから始める。分岐やデータ加工が増える見込みがあるならMakeで設計する。まずはこの切り分けで十分です。
本番投入前には、実データに近い問い合わせを数パターン流し、エラー通知、権限、実行回数を確認してください。自動化は「作れた」だけでは終わらず、止まったときに気づける状態まで作って初めて実務で使えます。
